あるプログラミングの講義(ディクレでの例)においてドイツゲームが利用されました。プログラミングは論理的な思考と文章を読みとっての実践などドイツゲームとの共通点が多い技術です。そこで以下のような使い方をしました。なお、ゲームは6ニムト、ファンタスミ、イシス&オシリス、ノイなど簡単なルールのものもばかりです。
1.ルールの読みとり
受講生は3,4人のグループになり、講師はそのグループごとに一個のゲームを渡します。受講生のグループはルールブックを読んで、そのゲームをプレイします。講師はルールについて何も教えません。たとえ間違ったルールでプレイしだしてもあえて最初のうちは口を出しません。
ドイツゲームは基本的にルールは簡単であり、特に他人から教えられた場合には容易に理解できます。しかし、文章化されたものを読んでゲームするという行為は他人から教えられるよりも難しく、少々時間がかかります。
プログラミングは、文章として書かれた「言語仕様」というルールに則って「プログラミング」という行為を行います。この点はゲームのルールを読んでプレイすることと本質的に同じことです。その練習として、これを行っています。
プログラミングのルールではなくゲームのルールなので、受講生は気軽に取り組むことが出来、多少間違えることはあったものの、ほぼ全てのグループが正しくプレイすることが出来ました。
2.ルールの解説
各グループがルールを把握した後、その中の一名をゲームとともに他のグループに移動させ、そのゲームの説明をさせました。
ゲームのルールを教えるという行為は他人に論理的な秩序を解説する行為です。これは仕様を他人に伝えるというSE(システムエンジニア)には無くてはならない技術と同じです。
また、プログラムの設計書を核技術にも通じるものがあります。
他人にどれだけわかりやすく、物事を伝えるか。実際にやってみると、ほとんどの場合、何とか伝えることは出来ますが、しかし、その意外な難しさは誰もが痛感します。これによって説明能力の必要性を感じることが出来ます。
3.勝ち方を考える
その後、自分が気に入ったゲームの勝ち方を検討します。ゲームの勝ち方を考える行為は、発想力と論理的思考能力を刺激します。プログラミングにはよりよいプログラムの完成という目標があり、それを目指すためにどうすればよいかを既存の経験などから発想し、思考する必要があります。それと全く同じことがゲームの勝ち方の検討にも言えます。工夫と発想が必要になるわけです。
ドイツゲームの場合、ルールが簡単で運の要素もありながら、それでも勝つための方法論というものがあります。それを見抜くことが出来るかどうかを講師はチェックしますので、事前にゲームの勝ち方を講師も考えておく必要があります。
これはやはりゲーム数がどうしても少ないため、あまりいい意見は出てきませんが、それでも考えると言うことに意義があるでしょう。
4.それ以外の効用
1〜3のようにプログラミングの実利的効用を期待して、ゲームを取り入れたのですが、実際には副次的な効果の方が大きかったようです。それはゲームを通じて、受講生が親しくなれたことです。「ゲームをしてからみんなと話すようになった」という意見を数日後聞くことが出来ました。
講義というのは講師から教わるだけではなく、他の受講生から教わったり、あるいは教えたりすることで大きな力がついていくものです。しかし、そのためには受講生がある程度親しくならないといけません。この受講グループは約半年間一緒に講義を受けてきたようですが、それでもなかなか親しくなれませんでした。それをゲームは1日で変えてしまったのです。
このようなコミュニケーション効果はプログラミングに限らず他の様々な講義でも応用できるはずです。まずはじめに簡単なゲームで場を和ませる、するとその後の講義がうまくいくのではないでしょうか。
※この例は当会が行ったものではなく会員が所属する(有)ディクレで行われた実施例です。(有)ディクレではボードゲームを利用したさまざまな研修をおこなっています。詳しくはこちら。